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相続分の放棄は、家庭裁判所で行う相続放棄とは異なります。遺産分割で取得する分をゼロにしても、相続人の地位や相続債務が当然になくなるわけではありません。署名前に書面の内容、借金への影響、分割手続への参加と期限を確認しましょう。
家族から「私は何もいらないと書いてほしい」と頼まれたとき、借金まで引き継がなくて済むと思っていませんか。「放棄」という同じ言葉でも、選ぶ制度によって効果が変わります。この記事では、相続分放棄の書面を渡された人が、家庭裁判所の相続放棄との違いと、署名前に確かめたい事項を整理します。
【関連動画】相続放棄と限定承認の違いを解説【相続のための弁護士チャンネル】
家庭裁判所で行う相続放棄と限定承認を紹介する補足動画です。私的な相続分放棄の効果は本文をご確認ください。3か月は自己のために相続開始があったことを知った時が基準です。限定承認は放棄した人を除く共同相続人全員で行い、公告・清算や税務等の負担もあり、費用や損失が必ずゼロになる制度ではありません。

相続分の放棄は、遺産分割で自分が取得する分をゼロとする意思表示です。京都家庭裁判所の案内では、相手との契約ではなく、放棄する人の一方的な意思表示による単独行為と説明されています。相続人としての地位を失う制度と同じではありません。
例えば、遺産に何があるか分からない段階で全ての取得分を放棄すると、後から財産が見つかった場合の扱いも問題になります。既知の財産一覧と未調査の範囲を示し、書面がどこまで対象とするのか説明を受けましょう。早く手続を終えたいという理由だけで、範囲を曖昧にしたまま署名しないことが大切です。
書面の表題だけでなく、対象の故人、相続開始日、放棄の範囲、提出先を読みます。「土地だけ取得しない」「相続分全部を放棄する」「兄へ譲渡する」は同じ内容ではありません。署名欄や別紙が空欄の書面を、後で相手に完成させてもらう方法は避けましょう。
特別受益を受けたため相続分がないと証明する書面も、相続分放棄とは区別して確認します。実際には受けていない贈与を受けたと認める必要があるのかも点検してください。特別受益証明書の確認点は、次の記事で説明しています。


民法938条の相続放棄は、家庭裁判所へ申述して行います。その効果は、同939条により、その相続について初めから相続人とならなかったものとみなされることです。家族に「放棄します」と伝えることや、私的な書面へ押印することだけでは、この手続の代わりになりません。
家族の話合いで「放棄した」と呼んでいても、家庭裁判所へ申述した事実と受理の資料があるかを確かめます。別の相続について放棄した経験があっても、今回の手続を済ませたことにはなりません。故人を取り違えず、受理通知等と今回の私的な書面を別に管理してください。
相続放棄等を選ぶ期間は、自己のために相続開始があったことを知った時から原則3か月です。家族が指定した署名期限と、この法的な期間は別に確認してください。調査に時間を要する場合の期間伸長も、家庭裁判所への申立てを検討する必要があります。
遺産の処分等により単純承認とみなされる場合もあります。相続分放棄の書面を既に提出した場合や、預金を払い戻して使った場合は、いつ何をしたかを伝えます。私的な書面の日付を直せば相続放棄もできる、と自己判断しないことが大切です。

相続分放棄では、相続債務はそのまま負担するものと解されています。財産を受け取らないことと、債権者から請求を受けないことは別です。兄弟が借金を全て払うと約束しても、内部の合意だけで債権者への責任が当然に消えるわけではありません。
負債の一覧には、債権者、契約者、残額の基準日、返済日、連絡を受けた日を記載します。相手が説明する見込額と、証明書や契約書で確認した額を分けてください。署名を急ぐ事情がある場合も、誰がどの借金を確認したかを示すと、必要な追加調査を相談しやすくなります。
通帳、不動産の資料だけでなく、借用書、返済予定表、保証契約、未払金の通知も確認します。故人の債務を相続する問題と、自分が以前から保証人として負っている債務は分けます。今のところ請求が届いていないことだけで、借金がないとは断定できません。
家族の説明が「何ももらわないなら借金もない」という内容なら、その前提を見直してください。借金を避けたいという目的を先に弁護士へ伝え、相続放棄の可否と期限、既に行った行為の影響を相談します。財産の評価がまだ不明でも、期限への対応を優先しましょう。
資料確認と相談の進め方
書面と対象財産・関係者を確認
↓
原資料と未確認事項を整理
↓
効果・必要な手続・期限を相談
期限や財産処分が迫るときは、資料がそろう前に相談してください。

相続分放棄と、特定の相手へ相続分を譲渡する契約は別です。「世話をしてくれた姉へ全部渡したい」という希望があるなら、誰へどの範囲を移したいかを明らかにします。放棄の書面へ署名すれば必ず希望した人だけが取得する、と考えないでください。
手続への参加負担を減らす目的なら、書面を出す前に、何の資料提出や連絡が今後も必要かを尋ねます。専門家に依頼している場合は、依頼範囲も共有してください。相手へ渡した原本の通数と控えの保管場所を記録しておけば、後で違う説明を受けたときも確認できます。
取得を希望しないのか、相手へ地位を移したいのか、借金を引き継ぎたくないのかを整理します。譲渡なら相手との合意、対価、税務や分割手続への影響も確認が必要です。兄弟への相続分譲渡の説明は、次の記事を参考にしてください。
複数の書類を一度に求められた場合は、それぞれの役割を確認します。放棄の意思表示、譲渡契約、遺産分割協議書をまとめて「同じもの」と扱わず、矛盾する記載や重複した処分がないかを相談しましょう。提出前の案と署名済みの完成版も分けて保存します。


相続分を放棄したからといって、調停の呼出しを自己判断で無視しないでください。裁判所の排除決定により当事者でなくなる場合がありますが、当事者としてとどまる必要がある場合や、その後に利害関係人として参加する必要がある場合もあります。
放棄書、印鑑証明書、相手からの説明、提出日、調停の事件番号と通知をそろえます。既に財産の分配や登記が進んでいるかも確認してください。書面を取り返せば当然に撤回できるとは限らないため、真意や説明の経過、使用状況を踏まえて対応を検討します。
相談では、取得分、借金、手続参加のうち何を解決したいかを伝えます。急ぐ期限があるときは、全資料がそろうまで待たず相談してください。初回相談の持参資料と質問メモは、次の記事が参考になります。


相続分放棄を選ぶ前に、何を実現したいのかを整理することが大切です。遺産を取得しないこと、特定の家族へ譲ること、借金を引き継がないことは、それぞれ確認する制度が異なります。放棄という言葉だけで判断せず、書面の範囲と相続債務、熟慮期間を確かめましょう。既に署名した場合も、完成版と説明の記録を持って相談してください。
異なります。相続分放棄は遺産分割の取得分をゼロにするもので、家庭裁判所の相続放棄とは地位や債務への効果が違います。
それだけでなくなるわけではありません。相続債務は残り得るため、債権者への責任と相続放棄の可否を別に確認します。
必ず希望どおりになるとは限りません。特定の相手への相続分譲渡など、目的に合った方法を相談してください。
自己判断で欠席せず、排除決定等の必要な手続と、その後の参加の扱いを裁判所へ確認してください。
相続分放棄では、取得分をゼロにしても相続人の地位と借金の責任が残り得ます。家庭裁判所の相続放棄や、相手へ渡す譲渡契約とは区別しましょう。署名前に目的、対象、債務、期限を整理し、調停中なら手続参加の扱いも確認することが大切です。

相続分放棄の書面や相続債務への影響でお困りの方は、署名を求められた書類と負債の資料をお手元に、弁護士法人ニューステージへご相談ください。