目次
【結論】
遺留分侵害額請求は、遺言や生前贈与によって最低限の取り分(遺留分)を侵害された相続人が、侵害した受遺者・受贈者に「金銭」で補填を求める権利です。請求できるのは配偶者・子(直系卑属)・直系尊属のみ。兄弟姉妹に遺留分はありません。時効は「侵害を知った日から1年」か「相続開始から10年」のいずれか早い方で消滅するため、早期の資料収集と通知が重要です。
第1章|遺留分とは(基礎)
- 意味:被相続人の自由な贈与・遺贈に対し、一定の相続人に保障された最低限の取り分
- 対象となる相続人(遺留分権利者)
- 配偶者、子(直系卑属)、直系尊属(親・祖父母)
- 兄弟姉妹には遺留分なし
- 遺留分の割合(総体)
- 直系卑属がいる場合:法定相続分の1/2
- 配偶者のみ又は直系尊属のみの場合:法定相続分の1/2(尊属のみのときは総体1/3とする説明もあるが、実務上は各人の遺留分=法定相続分×1/2で理解されることが多い)
- 計算の土台(遺留分算定基礎財産)
- 相続時の遺産+相続開始前の一定期間の贈与(原則10年内の贈与・特別受益性の強い近親者への贈与は期間不問の解釈余地あり)− 債務
第2章|遺留分侵害額請求とは(2019年民法改正のポイント)
- 性質:金銭債権(現物返還請求ではなく金銭での補填が原則)
- 相手方:受遺者(遺言で財産を受けた者)・受贈者(生前贈与を受けた者)
- 優先順:遺贈が先、足りなければ贈与へさかのぼる(贈与は原則として新しいものから遡る)
第3章|請求できる人・できない人
- できる人(遺留分権利者)
- できない人
- 相続放棄・廃除・欠格の影響
- 相続放棄した者は遺留分権を行使できない(最初から相続人でなかった扱い)
- 廃除・欠格も同様に権利なし
第4章|時効(除斥期間)と起算点
- 短期:侵害を知った日から1年
- 「相続の開始」と「侵害者・侵害内容」を知った時点が起算(判例・実務基準に沿って個別判断)
- 長期:相続開始から10年(絶対期限)
- 中断・停止
- 内容証明による催告で一時的猶予はできるが、確実なのは調停申立や訴訟提起(権利行使)による時効中断
第5章|手続きの流れ(実務フロー)
- 事実整理・資料収集
- 遺言書の有無・内容、遺産目録、相続関係図
- 贈与の有無(贈与契約書・振込記録)、保険金・死亡退職金の受取状況(遺留分算入性の検討は必要)
- 遺留分の概算計算
- 遺留分算定基礎=(相続時遺産+対象贈与−債務)
- 各人の遺留分=法定相続分×1/2
- 侵害額=各人の遺留分−実際取得額(マイナスなら請求無し)
- 内容証明で請求通知(任意交渉)
- 相手方(受遺者・受贈者)に金額・根拠・支払期限を明記
- 家庭裁判所での調停申立(任意交渉が不調なら)
- 管轄:相手方の住所地等
- 調停で金額・支払方法(分割・期限・利息・担保)を合意
- 訴訟(調停不成立の場合)
第6章|計算ミニ例(数値イメージ)
- 前提
- 相続財産:現金1,000万、不動産3,000万=計4,000万
- 生前贈与:長女に1,000万(算入対象)
- 債務:0
- 相続人:配偶者・長女・長男(各法定相続分:配偶者1/2、子各1/4)
- 算定基礎:4,000+1,000=5,000万
- 各人の遺留分
- 配偶者:5,000×(1/2)×(1/2)=1,250万
- 長女:5,000×(1/4)×(1/2)=625万(ただし長女は既に1,000万贈与受領)
- 長男:同625万
- 侵害判定
- 長女は既受贈1,000万>遺留分625万→自分の遺留分は満たす
- 長男の実取得(相続で予想0のケース等)<遺留分625万→受遺者・受贈者(長女)へ625万の範囲で請求可能(具体は遺言・取得状況に左右)
第7章|対象に算入されやすい・外れるもの(注意点)
- 算入されやすい
- 相続開始前10年以内の贈与(相続人への贈与は原則全期間対象の解釈余地、裁判例要参照)
- 遺贈(遺言での譲渡)
- 原則算入しない(ただし例外検討)
- 通常の扶養・教育費、香典・見舞金
- 受取人固有の生命保険金・死亡退職金は原則遺産外だが、著しく過大な場合は持戻し・寄与の議論の対象になり得る
第8章|合意条件の設計(揉めない条項)
- 支払方法:一括/分割(回数・スケジュール)
- 期限・遅延利息:期限の利益喪失条項、遅延年◯%
- 担保:抵当権設定、連帯保証
- 清算条項:本件をもって遺留分侵害額請求権を含む一切を解決
第9章|よくある質問(FAQ)
Q1. 請求は誰にする?
A. 受遺者・受贈者(遺言で受けた人、生前贈与を受けた人)に対して行います。
Q2. まず何をすれば良い?
A. 遺言・贈与の有無を確認し、遺留分算定基礎の把握。内容証明で期限を区切った請求を。
Q3. 兄弟だけの相続でも遺留分はある?
A. いいえ。兄弟姉妹に遺留分はありません。
Q4. 時効の「知った日」とは?
A. 相続が開始し、侵害者・侵害内容を具体的に認識した時。遺言開示・遺産内容の把握時が目安。
Q5. 不動産で返してほしい
A. 現行法は金銭補償が原則。任意合意で現物交付も可能だが、法的請求としては金銭になります。
第10章|今日からのチェックリスト
- 相続人と相続関係図を作った
- 遺言書・遺産目録の有無を確認した
- 過去の贈与(誰に・いつ・いくら)を一覧化した
- 遺留分の概算を計算した(法定相続分×1/2)
- 内容証明の草案を作った(相手・金額・根拠・期限)
- 調停・訴訟を見据え、弁護士相談(Zoom可)を予約した
第11章|専門家コメント(弁護士法人ニューステージ)
「時効は“知った日から1年”。この1年が勝負です。資料をそろえ、まずは内容証明で権利を明確化してください。」
── 弁護士 下元 高文
「金額だけでなく、支払方法・担保まで設計して合意に落とすのが実務。税務との整合も忘れずに。」
── 弁護士 三浦 宏太
第12章|動画 遺留分侵害額請求とは?基礎知識と実際の手続き
遺留分侵害額請求とは?基礎知識と実際の手続き
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