目次
【結論】
名義預金は「名義と実質が一致していない預金」。名義が子や配偶者でも、資金の出どころ・管理実態が被相続人にあると“被相続人の財産”として相続税の課税対象になり、遺産分割でも持戻し(特別受益)争いの火種になります。回避策は、(1)贈与の実態(意思・通知・受領・管理)を整える、(2)記録を残す、(3)生前から家族で情報共有し、(4)不明点は弁護士・税理士に早期相談することです。
第1章|名義預金とは(定義と判定の考え方)
- 定義
- 口座名義人と実質的な所有者が異なる預金。典型例は「親が子名義で貯めた口座」。
- 実質判定の主要要素(税務・相続実務)
- 資金の拠出者:誰のお金で積み立てたか
- 贈与意思の有無:贈与契約や贈与の通知・承諾はあったか
- 管理権限:通帳・届出印・キャッシュカードを誰が保管・操作していたか
- 受領・支配:名義人本人が引き出し可能で自由に使えたか
- 利息や履歴:入出金の経緯、被相続人の口座との資金移動の有無
第2章|なぜ問題になる?(相続・税務の影響)
- 相続税
- 名義が子でも実質が親の財産なら、親の相続財産として課税対象に算入。
- 税務調査で指摘されやすい論点。過去の入金・管理実態が重視される。
- 遺産分割
- 名義人の「自分の金」主張と、他相続人の「遺産に戻せ」主張が対立。
- 生前贈与が成立していても、特別受益として持戻し調整の対象になることがある。
第3章|名義預金になりやすいケース
- 子名義の学資口座や貯蓄口座を親が一方的に管理・入金
- 配偶者名義の生活費残からの積立を実質的に被相続人が指示・管理
- ボーナス時だけ被相続人が大口入金し、通帳・印は被相続人が保管
- 高齢期に代理で作成したネット銀行口座を家族が運用
第4章|贈与が有効と認められるための要件(チェックポイント)
- 贈与契約の存在
- 口頭でも成立し得るが、贈与契約書や贈与通知書があると強い。
- 受領・支配の移転
- 名義人本人が通帳・印鑑・カードを保管し、自由に使える状態。
- 継続性・合理性
- 学資・生活費など目的と金額が整合。突発的な高額入金は要注意。
- 税務の整合
- 年110万円超の贈与は贈与税申告の有無も整合性材料。
第5章|トラブル回避の実務ステップ(生前対策)
- 口座の棚卸し
- 家族名義の預金・入金源・管理者・通帳印の所在を一覧化。
- 真正な贈与に整える
- 繰り返し贈与は贈与契約書(年次でも可)を作成。受贈者が通帳・印・カードを保管。
- 目的と金額の明確化
- 学資・生活費など用途メモを残す。入金メモ・メール・家族会議議事録が有効。
- 税務整理
- 110万円超は贈与税申告の検討。相続時精算課税の選択は影響が大きいので税理士と相談。
- 家族への周知
- 「どの口座は誰のものか」を生前に共有。保管場所と連絡先を明示。
第6章|相続発生後の対応(争わない手順)
- 事実関係の確認
- 残高証明・取引履歴(1〜5年)を相続人全員で確認し、入金源・管理状況を整理。
- 仮説の分岐
- 真正贈与と説明できる→遺産から除外(ただし特別受益の可能性を検討)。
- 実質は被相続人管理→名義預金として遺産に算入。
- 合意形成
- 名義預金分を遺産に戻した上で、按分や代償金で公平に調整。
- 文書化
- 遺産分割協議書に「名義預金の取扱い」を明記。将来の再燃を防止。
第7章|よくあるQ&A
Q1. 子名義の口座に親が積み立てていたら全て名義預金?
A. 一律ではない。贈与意思・受領・管理移転があり、子が自由に使えたなら名義預金でない可能性。
Q2. 学資保険の満期金は?
A. 受取人・保険料負担者・管理実態で判断。特別受益や名義預金の論点になり得る。
Q3. 税務調査では何を見られる?
A. 入金ルート、通帳・印鑑の保管者、ネットバンキング権限、贈与税申告の有無、家族の供述整合。
Q4. いま名義預金が疑われる口座がある。どうすべき?
A. 生前なら贈与の実体化(管理移転・書面化)か、不要なら解消。相続発生後は全員で履歴確認→合意を文書化。
第8章|名義預金の取扱い条項(遺産分割協議書ミニテンプレ)
- 条項例(コピペ可)
- 「相続人A名義の◯◯銀行◯◯支店普通預金(口座番号◯◯◯◯◯)につき、当該預金は被相続人の資金により管理・運用されていた名義預金であることを相互に確認し、その残高◯◯◯万円は被相続人の遺産に算入する。これを基礎として本協議書記載の各相続分・代償金に従い精算する。」
- 「上記以外の相続人名義預金で真正な贈与が成立しているものは、遺産から除外する。」
第9章|数値つき具体例(イメージ)
- 例|子名義口座に年50万円×10年(通帳・印は親保管)
- 判定:名義預金と認定されやすい
- 取扱い:相続財産に算入→遺産分割で按分。特別受益調整も検討
- 例|子名義口座に年100万円×5年(贈与契約・子が管理)
- 判定:真正贈与の可能性高い(贈与税申告の整合あればさらに強い)
- 取扱い:遺産から除外。ただし持戻し(特別受益)で一部調整の合意も現実的
- 例|配偶者名義で生活費余剰を積立(出入は配偶者管理)
- 判定:配偶者固有財産の可能性。ただし原資・管理実態の照合必須
第10章|関西の実務メモ(大阪・神戸・京都)
- 事例傾向
- 大阪:子名義の学資貯蓄が名義預金と指摘されやすい。ネット銀行の家族運用も要注意。
- 神戸:高齢期の代理管理が長期化しやすく、印鑑・カードの保管者記録が鍵。
- 京都:タンス預金・貸金庫と名義預金が併存する案件が散見。開披・目録化の運用が有効。
- 実務のコツ
- 取引履歴(5年)と入金源(給与・年金・事業)をマッピング。家族ヒアリングを同日で実施。
第11章|今日からできるチェックリスト
- 家族名義の預金一覧を作成(銀行・支店・口座種別・残高・名義)
- 入金源・管理者・通帳印の保管者を記録
- 贈与契約書(簡易で可)と贈与通知・受領メモを作成
- 110万円超は贈与税申告を検討(税理士に相談)
- 家族会議で「名義預金の線引き」を共有
- 相続発生時に履歴を全員で確認する段取りを決める
第12章|専門家コメント(弁護士法人ニューステージ)
「名義預金は“記録の有無”で結論が変わります。資金の出所・管理・受領の3点を生前から証拠化しましょう。」
── 弁護士 下元 高文
「贈与の設計は税務とセット。真正な贈与に整えつつ、将来の特別受益調整まで見据えるのが実務です。」
── 弁護士 三浦 宏太
第13章|動画 相続の相談でよく聞かれる「預金」に関する疑問5選
相続の相談でよく聞かれる「預金」に関する疑問5選
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