目次
【結論】
実務でトラブルを最も回避しやすいのは「売却(換価分割)」か「代償分割(誰かが取得し他へ金銭支払い)」です。分筆は技術的・法的に可能なら有力ですが費用・期間のハードルがあり、共有は将来の紛争・管理負担が高い選択です。相続人が多いほど、評価の透明化と第三者(弁護士・不動産専門家)の関与が早期合意の近道になります。
第1章|不動産分割の主要な選択肢(概要比較)
- 分筆(物理的に土地を分ける)
- 向くケース:整形地・十分な間口と面積がある、法規制クリア、各人が独立して利用したい
- メリット:将来の関係清算が明確、各相続人が単独所有に
- デメリット:測量・境界確定・分筆登記の費用と時間、建築基準法・都市計画の制約、建物は簡単に分筆不可
- 共有(持分で共有名義にする)
- 向くケース:短期で暫定対応したい、売却時期を見極めたい
- メリット:今すぐ売らずに保有できる、初期コストが小さい
- デメリット:管理・修繕・固定資産税負担の意思決定が困難、将来売却時も全員同意が壁、持分処分で第三者が関与し紛争化リスク
- 売却(換価分割)
- 向くケース:感情的対立が強い、現金化して相続税・代償金を確保したい
- メリット:現金で公平分配、管理問題の解消、納税資金確保
- デメリット:居住者の転居調整、相場より安くなる可能性、譲渡所得税の検討が必要
第2章|もうひとつの定番:代償分割の使いどころ
- 概要:
不動産は特定の相続人が取得し、他の相続人へ代償金(現金)で調整
- メリット:
家を残したい希望と公平性の両立、共有回避で将来紛争を防止
- デメリット:
取得者の資金力が必要(ローン活用も可)、代償金の期日・利息等の取り決めが要
第3章|費用・期間・リスクの比較(目安)
- 分筆
- 期間:1.5〜6カ月(測量・境界確定→分筆登記)
- 費用目安:筆界確認測量60〜150万円+隣地立会・境界標復元等、登記費用数万円〜
- 主なリスク:接道要件(建築基準法42条)、最低敷地面積・用途地域、他相続人の建物利用制約
- 共有
- 期間:協議成立後すぐ登記可
- 費用目安:持分移転登記の登録免許税(固定資産税評価額×0.4%)+司法書士実費
- 主なリスク:意思決定の硬直化、将来の持分譲渡・差押え、管理不全
- 売却(換価分割)
- 期間:2〜6カ月(一般媒介〜成約〜引渡)
- 費用目安:仲介手数料(上限:売買価格×3%+6万円+消費税)、測量・境界確定が必要な場合あり、残置物撤去費 等
- 主なリスク:成約価格のブレ、居住者対応、税務(譲渡所得)への配慮
- 代償分割
- 期間:1〜3カ月(合意→資金手当→登記)
- 費用目安:登記費用、資金調達コスト(住宅ローン・相続専用ローン等)
- 主なリスク:代償金不払い、評価の妥当性争い
第4章|評価の透明化がカギ(揉めないための手順)
- ステップ
- 公的資料の収集:固定資産評価証明書・登記事項証明書
- 相場の把握:近隣成約事例、複数社の査定書(2〜3社)
- 争点整理:路地状敷地、再建築可否、借地・底地、賃貸中のオーナーチェンジなどの減価要素
- 税務観点:相続税評価と時価の差、譲渡所得が発生するケースの試算
- ポイント
- 同じ資料を全員に配布し、評価根拠を見える化
- 代償分割の場合は支払スケジュールと担保(抵当権設定・違約条項)を協議書に明記
第5章|ケース別の最適解(具体例)
- ケース:整形で広い土地、相続人2名が近隣居住
- 最適案:分筆+それぞれ単独所有
- 留意:接道・用途地域とライフライン分岐を事前確認
- ケース:古家付き・相続人多数・意見対立
- 最適案:売却(換価分割)
- 留意:残置物撤去・測量の段取り、内覧対応のルール化
- ケース:親世代が居住継続希望、他相続人は現金化
- 最適案:代償分割(取得者がローンで代償金を支払い)
- 留意:支払期限と分割払いの約定、担保設定
- ケース:駅近マンション、相続税資金が不足
- 最適案:早期売却で納税資金確保、残余を按分
- 留意:申告期限(10カ月)から逆算した販売スケジュール
第6章|建物はどうする?共有・区分・耐用年数の視点
- 一戸建ては物理分割困難→共有か売却、又は土地のみ分筆して建物は誰かが取得
- 区分所有(マンション):基本は持分按分、居住継続なら代償分割が実務的
- 古家の扱い:リフォーム/建替の同意形成が難しいため、売却か単独取得+代償が無難
第7章|協議書に入れるべき条項(抜け漏れ防止)
- 不動産の特定:地番・家屋番号・種類・構造・床面積
- 分割方法:分筆/共有割合/売却方針(媒介契約種別、最低売却価格、売却期限)
- 代償金:金額・支払期限・方法・遅延損害金・担保
- 費用負担:測量・登記・仲介手数料・残置物撤去の分担
- 管理・利用:売却までの使用ルール、固定資産税・保険料の負担割合
- 清算条項:本件相続に関し相互に他の請求をしない
第8章|ミニテンプレ(コピペ可)
- 売却方針条項(例)
- 当事者らは、別紙物件を令和◯年◯月末日までに売却する。媒介はA社・B社の一般媒介とし、最低売出価格は金◯◯◯◯万円、価格改定は各相続人の過半数の同意で行う。売却費用は売却代金から控除し、残額を法定相続分に従い按分する。
- 代償金条項(例)
- 相続人甲は下記不動産を単独取得し、乙・丙に対し各金◯◯◯万円を令和◯年◯月◯日までに乙・丙指定口座へ振込送金する。期限後は年5%の遅延損害金を付す。担保として当該不動産に乙・丙を抵当権者とする第一順位抵当権を設定する。
第9章|関西の傾向と事例(大阪・神戸・京都)
- 大阪市内:駅近マンションは早期売却志向、郊外戸建は感情面で共有主張→後に管理で紛争化しやすい
- 事例:大阪市北区/相続人4名/古家付き宅地
- 解決:測量+近隣取引で相場合意、長男単独取得・他3名に各350万円代償。45日で合意
- 神戸:山手・海側で価格差が大きく評価争いが多い
- 事例:神戸市東灘区/相続人3名/更地
- 解決:3社査定の中央値で売却、仲介手数料控除後を3等分。90日で成約
- 京都:町家・景観規制の影響あり
- 事例:京都市下京区/町家
- 解決:代償分割+年1回の維持管理確認条項で合意。登記・支払まで70日
第10章|よくある疑問(FAQ)
Q1. 分筆はどの土地でも可能?
A. いいえ。接道要件や最低敷地面積、用途地域で制約。測量士に事前確認を。
Q2. 共有は何が問題?
A. 売却・修繕の意思決定が麻痺しやすく、持分売却や差押えで第三者が入ると紛争化。
Q3. 代償金はローンで払える?
A. 住宅ローンや相続対策ローンの利用事例あり。返済原資と担保設定を詰める。
Q4. 売却益に税金はかかる?
A. かかる場合あり。譲渡所得の特例(相続空き家3000万円控除等)の適用可否を税理士に確認。
Q5. 居住中の家は売れる?
A. 可能だが、引渡条件・時期・立退合意を売買契約に明記する必要。
第11章|進め方チェックリスト(今日から)
- 登記事項・固定資産評価証明の取得
- 近隣成約事例/複数社査定の収集
- 測量士・不動産会社・弁護士への初回相談
- 分割方針(分筆/共有/売却/代償)を一次案・二次案で準備
- 協議書ドラフトに条項を記入
- 納税資金・代償金の資金計画を作成
第12章|専門家コメント(弁護士法人ニューステージ)
「不動産は“評価の透明化”が肝です。根拠資料を揃えれば、対立していても着地点が見えてきます。」
── 弁護士 下元 高文
「共有は一見楽でも将来のコストが高い。売却か代償分割で単独所有にする設計が、実務ではトラブルを減らします。」
── 弁護士 三浦 宏太
第13章|動画 相続でよくある「分けられない財産」の処理方法とは
相続でよくある「分けられない財産」の処理方法とは
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